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真鯛は、どこで何を食べているのか――口・胃の中・潮の流れから読む、マダイの捕食生態に迫る

頭と胴に厚みのある大型真鯛が砂地と岩礁の上を泳ぐイメージ

秋の真鯛|紅葉鯛特集

「砂地と岩礁が混じる深場を狙う」「底から2〜3m浮かせる」「ゆっくり誘う」。真鯛釣りには、さまざまな狙い方がある。その理由を確かめるには、魚の側から海を見直す必要がある。

何を食べられる口を持ち、実際に何を食べ、どのように餌を捕まえるのか。本稿では、胃内容物調査、天然魚の水中観察、水槽実験を手掛かりに、マダイの食事を追う。各地の研究を扱い、稚魚の結果と成魚への応用は区別する。

硬い殻を砕く歯と、小さな餌を食べる暮らし

マダイの口をのぞくと、形の違う歯が並んでいる。前方には尖った円錐形の歯、奥には丸みのある歯。ふなばし三番瀬環境学習館の前上顎骨標本でも、その構造を確認できる。甲殻類や貝類の硬い殻を砕ける歯である。標本解説「マダイの上あご」

この構造からは、餌を捉えることと、硬い部分を砕くことの両方に対応した口が読み取れる。ただし、砕ける能力があることと、毎日硬い餌ばかり食べていることは別だ。普段の食事は、胃の中を調べると見えてくる。

瀬戸内海東部の友ヶ島水道では、マダイの胃内容物を調べた研究がある。稚魚は6〜7月にカイアシ類などの動物プランクトンを食べ、8月以降には小型のエビであるLeptochela属が重要になった。このエビ類は1歳以上の魚でも主要な餌だった。食事は成長や季節によって変わり、その海域で利用できる餌にも左右される。島本・渡辺(1994)

「真鯛の好物は何か」という問いには、二つの意味がある。よく食べている餌と、ほかの餌より選んで食べたい餌だ。胃にエビが多く入っていても、その周囲にエビが非常に多かった可能性は残る。好みまで確かめるには、海中の餌の量や、別の餌を選べる条件も調べる必要がある。

釣りにとって役立つ問いは、「何が好きか」に加えて、「その場所で今、何を食べる機会が多いか」だろう。

海底をついばみ、水中の餌も捕らえる

愛媛県沿岸で行われた天然稚魚の観察では、マダイはコアマモの多い砂地に縄張りを持つ傾向があった。確認された行動には、砂や底の物をついばむ、掘る、水中や底付近で捕食する、水を吹き付ける、といった複数の方法が含まれる。工藤・山岡(1998)

少なくとも稚魚は、海底とその上の水中を使い分けて餌を探している。砂地にも餌場としての意味があり、岩礁との混在を生息の必須条件にはできない。一方、この観察だけで大型魚の居場所や縄張りを説明することもできない。

ここで区別したいのが、水深と、海底からの高さである。水深20mの場所にいることと、底から2m上で食べることは別の情報だ。胃内容物から食べた生物は分かっても、食べた瞬間の高さまでは通常分からない。

「底から2〜3m」は釣りで試す設定として扱える。しかし、今回の研究から導ける、真鯛共通の捕食高度ではない。

朝、夕まづめ、夜。胃の中が示した時間帯

捕食時間を調べた研究として、1964年11月18〜19日に黄海で採集された若齢マダイ856尾の調査がある。昼の魚は胃内容物が多く、消化の進み方も夜より小さかった。著者はこの結果から、主に朝に食べ、翌朝までに消化する日周的な摂餌リズムを推定した。岡田(1965)

この研究は、時間帯による食事の違いを、胃の量と消化状態から捉えた点に価値がある。ただし、対象は黄海の若齢魚で、調査期間は2日間。「どの海でも朝が最良」とまでは言えない。

夕まづめや夜に浅場へ入るかを確かめるには、同じ魚の深浅移動を追う観測が必要になる。浅場で夜に釣れた事実だけでは、昼は深場にいたのか、もともと浅場にいた魚が食べ始めたのかを区別できない。

釣り場で考えるときも、時刻、魚の移動、食べ始める条件を一つにまとめないことが大切だ。

流心か、淀みか。餌の群れと魚の位置は一致しない

潮との関係を考えるうえで興味深いのが、マダイ稚魚とカイアシ類を使った流水実験だ。

水路に障害物を置くと、餌のカイアシ類はその下流側に集まった。しかし、体長10〜35mmのマダイは餌の群れの中に居続けるとは限らず、底近くで上流を向き、流れてくる餌を捕らえていた。流れとともに移動しながら、横から捕食する行動も観察された。西海区水産研究所「マダイ稚魚着底場造成技術の検討」

これは稚魚の実験であり、成魚が選ぶ流速や場所を直接示すものではない。それでも、釣り場を見るための有用な仮説が生まれる。餌が集まる場所と、魚が捕まえやすい場所には、ずれがあるのではないか。

この仮説を釣りに持ち込むなら、次のように考えられる。

場所 確かめたいこと
流れの速い筋 餌が通るか。その層まで仕掛けを届けられるか
淀みの中 餌が滞留するか。魚がそこで食べているか
淀みから流れ出す部分 集まった餌が周囲へ運ばれる経路になるか
岩や段差の周辺 流れの変化と、餌の通り道が重なるか
海底付近 底の餌と、流れてくる餌のどちらを利用しているか

これは成魚の定位場所を確定した表ではなく、研究をもとにした観察の視点である。「潮が速いから良い」「淀んでいるから悪い」と決める前に、餌の供給と捕まえやすさを一緒に考えたい。

誘いは効くのか。「好奇心」を行動に置き換える

動く物への反応については、マダイを使った水槽実験がある。錘、疑似餌、スルメイカの短冊を動かした場合と静止させた場合を比較し、8秒周期の動きで、静止時より強い摂餌行動の誘発効果が認められた。丘ほか(2013)

この結果は、動きが反応を引き出す場合があるという根拠になる。ただし、実験で評価した行動と、自然の海で針掛かりする確率は同じではない。「8秒で誘えば釣れる」「落下中が最も食う」「常に動かす方がよい」という結論にはならない。

釣りで検証するなら、同じ場所と棚で、静かに流す時間と、小さく誘いを入れる時間を比べる方法がある。棚や餌も同時に変えると、反応が変わった理由を見分けにくくなる。これは論文で完成した釣法ではなく、結果を現場で確かめるための提案だ。

購入前の判断

真鯛を狙う、カゴ釣りタックル例

真鯛のカゴ釣りタックル例。道糸から遊動ウキ、天秤、カゴ、ハリス、針までの仕掛け図

餌を狙った潮へ届け、流しながら棚を探る。ベイトとスピニング、それぞれの組み合わせを紹介します。

組み合わせ
ベイトは25剛弓カゴ 4号-53B遠投・J+カルカッタコンクエストMD 400XGLH。スピニングは剛弓マダイ 3.5-53遠投・Q+23レグザ LT5000-C。
仕掛け
遠投ウキ・遠投カゴは8〜12号を目安に浮力と負荷を合わせ、天秤を使用。道糸はナイロン5〜6号、ハリスはフロロ2.5〜4号を釣り場に応じて選びます。
道糸の太さと、巻ける長さを合わせて選ぶ

カルコンMD400XGLHの公称ナイロン糸巻量は20lb235m・25lb200m。号数との対応は使う糸の直径で確認します。レグザLT5000-Cは3.5号230m・5号150m。遠投後や流した後に残る糸の長さを考えて選びます。

伊豆の一尾へつなげる

「深さがあり、砂地と岩礁が混じる場所」という見立てを、伊豆で試す出発点にすることはできる。そこから一歩進めて、何が餌になり、その餌がどこから届き、どの高さで魚と出会うのかを考える。

釣れた一尾は、仕掛けが合っていた証拠であると同時に、その魚の食事に出会えた記録にもなる。